- 脂肪腫ができやすい人に共通する
体質・性別・生活習慣 - 脂肪腫(リポーマ)について
- 脂肪腫の原因
- 脂肪腫の種類
- 脂肪腫と見た目が似ている病気
- 脂肪腫ができやすい部位
- 脂肪腫の治療・流れ
- 脂肪腫の治療費はいくら?
保険は使える?
脂肪腫ができやすい人に
共通する体質・性別・生活習慣

脂肪腫ができる具体的な原因は未だに不明です。しかし、遺伝や特定の疾患と関連しているのではないかとされています。
脂肪腫ができやすい人の特徴とは?肥満・疾患・性別の傾向
肥満
脂肪細胞の集まりによってできるため、肥満の方は脂肪腫ができやすい傾向にあります。
高脂血症・糖尿病
高脂血症や糖尿病も脂肪腫に関連するとされており、これらの疾患がある方ではリスクが高まります。脂質の代謝異常により動脈硬化が進み、血管周囲に脂肪腫が形成されるリスクもあります。
性別
脂肪腫は女性に多く見られます。これは女性ホルモン(エストロゲン)が脂肪細胞の増殖を促す働きによると考えられています。
一方で、アルコールの多量摂取や肝機能障害がある男性に多いとされる「良性対側性脂肪腫」は、肩・腕・太ももなどに左右対称で現れる珍しいタイプです。
なぜ脂肪腫ができる?遺伝や生活習慣など3つの主な要因
脂肪腫が繰り返しできる理由には、いくつかの要因が関係していると考えられています。
遺伝的要因
遺伝的背景として、染色体異常が見られるケースもあります。遺伝子が関与している可能性がありますが、必ずしも遺伝するわけではないとされています。
生活習慣
肥満や喫煙、皮膚への継続的な刺激といった生活習慣の乱れも脂肪腫のリスクを高める要因です。
飲酒
多発性脂肪腫の場合、過度の飲酒が関連している可能性があります。脂肪代謝や全身の健康状態に影響を及ぼすことで、脂肪組織に間接的な作用をもたらすことがあるとされています。
脂肪腫(リポーマ)について
脂肪腫は、脂肪細胞が増殖して皮膚の下にできる良性腫瘍です。皮膚との癒着はなく、柔らかいしこりとして触れることが多いため、粉瘤(アテローム)と似ていますが、脂肪腫は化膿や悪臭を伴うことはありません。
極めて稀に悪性の脂肪肉腫である可能性もあるため、しこりに気づいた場合は早めに受診しましょう。
脂肪腫の原因
脂肪腫の原因は明確には解明されていませんが、未分化の脂肪細胞の異常が関与していると考えられています。
成熟した脂肪細胞は増殖しないのですが、成人になっても毛細血管の周りには、増殖可能な未分化脂肪細胞が残っており、これらの細胞が異常に分化・増殖することで脂肪腫ができる可能性があります。
脂肪腫の種類
脂肪腫には臨床的な分類と、摘出した組織の成分による病理学的分類があります。
臨床的分類
びまん性脂肪腫症
皮下だけでなく筋肉内や内臓にも広がる脂肪腫です。稀に2歳以下の乳幼児に発症します。
良性対側性脂肪腫症
頚部や体幹、四肢などに左右対称に多発するタイプで、過度の飲酒をされている方に多く見られます。
表在性皮膚脂肪腫性母斑
真皮内に脂肪組織が入り込み、真皮細胞と置き換わることで、お尻や腰、大腿などに柔らかい結節が複数生じて、皮膚が盛り上がることがあります。
病理学的分類
血管脂肪腫
血管脂肪腫は血管を多く含む良性腫瘍で、1cm程度の大きさが一般的です。軽度の痛みを伴うこともあります。
繊維脂肪腫
膠原線維が多く含まれる脂肪腫で、首の後ろや背中など圧のかかる部位にできることが多いです。
紡錘細胞脂肪腫
脂肪腫内に線維芽細胞に似た紡錘型の形の細胞の増殖を伴うもので、その細胞に異形成はなくあくまで良性腫瘍です。中高年の男性の後首部や肩甲部によく見られます。
脂肪腫と見た目が似ている病気
脂肪腫はやわらかく皮膚の下にしこりとして現れる良性腫瘍ですが、見た目や触れた感触が似ている他の病気も多数あります。
中には悪性の腫瘍が含まれる場合もあるため、自己判断せず医療機関での診断が大切です。ここでは、脂肪腫と間違われやすい代表的な疾患を紹介します。
粉瘤(ふんりゅう)
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造ができ、中に老廃物(角質や皮脂)がたまることで生じる良性の腫瘍です。
中央に黒い点(開口部)があることが多く、押すと悪臭を伴う白い内容物が出てくるのが特徴です。炎症を起こすと赤く腫れて痛みが出ることもあり、脂肪腫と区別が難しい場合があります。
ガングリオン
ガングリオンは関節や腱のまわりにできるゼリー状のしこりで、手首や指などに発生しやすい腫瘤です。
内容物は関節液で、押すと少し弾力があり、場所によっては神経を圧迫して痛みやしびれを感じることもあります。
脂肪腫よりもやや硬めで、動きに合わせて大きさが変わることもあります。
脂肪肉腫(しぼうにくしゅ)
脂肪肉腫は、脂肪組織から発生する悪性腫瘍(がん)です。初期には脂肪腫と非常によく似ており、痛みがなくゆっくりと大きくなるため見分けがつきにくいのが特徴です。
サイズが大きい、急に増大した、深部に硬いしこりを感じる場合は、速やかに医療機関を受診し、画像検査や病理検査による診断が必要です。
外骨腫(がいこつしゅ)
外骨腫は、骨から突出するようにできる硬いこぶのような良性腫瘍です。主に手足の骨の端や関節周辺にでき、皮膚の下で「コリッ」とした硬い触感が特徴です。
脂肪腫のようにやわらかくはないため、触ったときの違いが判断の手がかりになります。痛みがある場合や成長が早い場合には、精密検査が推奨されます。
脂肪腫ができやすい部位
脂肪腫は、皮下脂肪が多い部位にできやすい良性腫瘍です。痛みはほとんどなく、背中や肩まわりなど、以下の部位に多くみられます。
背中や肩まわり
特に背中や肩は、衣類やリュックの圧迫で発見されるケースです。頻度も最多とされています。
首まわり
触れた時、しこりを感じて発見されるケースが多いです。見た目を心配する方も多くいらっしゃいます。
腕や太もも
皮下脂肪が豊富に含まれている部位のため、脂肪腫ができやすい傾向にあります。
お腹やお尻
脂肪が多いため、座った時の違和感や皮膚のふくらみに気付いて発見されるケースがあります。
顔・頭皮
見た目を気にして受診される方も少なくありません。発症例は比較的少なめです。
また、筋肉の奥や内臓周りにできた脂肪腫は自覚しづらく、発見が遅れることもあります。触った時、しこりやふくらみがあるのに気付いた場合は、脂肪腫以外の可能性にも考慮して、早めに医療機関へ受診しましょう。
脂肪腫の治療・流れ
まずはエコー検査によって診断を行います。エコーで判断が難しい場合には、必要に応じて他院にてMRI検査を行うことがあります。診断結果によっては当日の手術も可能ですが、状況により再度ご来院いただく場合があります。
治療対象部位のマーキング
術前にマーキングを行って切開位置を決定します。
手術
以下の流れで進めます。
局所麻酔
極細針を使用し、痛みを抑える工夫をしながら局所麻酔を注入します。
切開
麻酔後に、脂肪腫の3分の2程度の長さを目安に皮膚を切開し、腫瘍にアクセスできる状態にします。切開部の傷跡がなるべく小さく、目立ちにくくなるよう丁寧に行います。
剥離と腫瘍の摘出
腫瘍を包む膜ごと丁寧に剥離し、ピンセットと指先で一塊として摘出します。皮下から浮かせるように除去するため、腫瘍全体の取り残しが少なくなります。
止血・縫合
摘出後の空洞に血液がたまりやすいため、十分な止血処置を行います。必要に応じて「ドレーン」と呼ばれる管を挿入し、血液や体液の排出を促します。その後、細い糸で丁寧に縫合し、ガーゼと伸縮テープで圧迫固定します。
抜糸・経過観察
術後1〜2週間で抜糸を行います。縫合糸が目立ちにくい方法を採用することで、術後の見た目にも配慮しています。抜糸から約1週間で赤みが引き、皮膚は自然な状態へと再生していきます。
脂肪腫の術後の注意点
- 術後は部位によって軽い痛みや腫れが数日続くことがあります。必要に応じて痛み止めが処方されます。
- 大きめの脂肪腫を切除した場合、縫合部が開かないよう安静が必要です。
- 患部の圧迫やマッサージ、強い刺激は避けてください。
- シャワーは翌日以降、医師の指示があれば可能です(傷の場所によって異なります)。
- 手術部位によっては数日間ガーゼ保護が必要です。指定された通院日にガーゼ交換を行います。
- 術後しばらくは激しい運動や入浴(湯船)は避け、傷の回復を優先しましょう。
- 傷跡をできるだけ目立たせたくない場合は、テープ保護や紫外線対策の指導があることもあります。
脂肪腫の治療費はいくら?
保険は使える?
脂肪腫の治療は、基本的に健康保険が適用される「保険診療」として行われます。そのため、自己負担額は3割(または1~2割)となり、自由診療に比べて料金を抑えて治療を受けることが可能です。
手術料金は、脂肪腫の大きさやできた部位(顔などの露出部かどうか)によって異なります。
以下に、保険適用時の自己負担額(3割負担の場合)の目安をご紹介します。
手術料金の目安
非露出部 | |
---|---|
3cm未満 | 4,000円~ |
3~6cm未満 | 10,000円~ |
6cm以上 | 12,000円~ |
露出部 | |
---|---|
2cm未満 | 5,000円~ |
2~4cm未満 | 11,000円~ |
4cm以上 | 15,000円~ |
※上記はあくまで一例であり、診察・処置内容・麻酔の有無などによって金額は前後する可能性があります。
※別途、初診料や検査料、薬代がかかる場合があります。
脂肪腫は多くの場合、日帰りでの切除が可能です。気になるしこりがある場合や、料金について不安がある方は、お気軽にご相談ください。