粉瘤を自分で潰すと危険?
知らないと怖いリスクとは
粉瘤をご自身で潰してしまうと、細菌が内部に入り込みやすくなり、炎症や化膿、さらには痛みや発熱に繋がる恐れがあります。
また、粉瘤は袋状の構造が皮膚内に残っている限り自然には治らず、自力で内容物だけを取り出しても根本的な治療にはなりません。確実に治すためには、医療機関で手術による摘出が必要です。
自己処理による3つのリスク
自己処理で粉瘤が大きくなる
粉瘤を無理に潰したり針で刺して内容物を取り出そうとすると、細菌感染によって炎症を起こすリスクがあります。炎症が進むことで粉瘤がより大きく目立つようになり、激しい痛みや化膿を引き起こす可能性もあるため、自分で処置することは避けましょう。
潰した傷が治りにくく、
跡が残る
自己処理によって生じた傷は、細菌感染の影響で治りにくくなり、痕が残ってしまうことがあります。粉瘤は内容物を包む袋まで取り除かなければ根本的な治療にはならず、袋まで自力で摘出しようとすると、傷が深くなる恐れがあります。
潰しても再発しやすく、
根本的な解決にならない
粉瘤を潰して膿や垢などの内容物を取り出せたように見えても、袋が残っている限り再発する可能性があります。この袋を自力で完全に取り除くのは非常に困難なため、再発を防ぐためには、医療機関での手術による摘出が必要です。
粉瘤(アテローム/
表皮嚢腫)について
粉瘤は皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に皮脂や角質などの老廃物が溜まる良性腫瘍です。触るとしこりとして感じられ、時間とともに大きくなりやすく、炎症を起こすと腫れや痛み、熱感が生じることがあります。
粉瘤の見分け方のポイント
- 皮膚のすぐ下に小さなしこりが触れることがある
- 同じ場所にしこりが繰り返しできる
- ニキビに似ているけど消えない
- 中から嫌な臭いのする内容物が出てくる
- しこりが次第に大きくなっていく
- 表面の中心が黒く見える
- 全体的に青っぽく見える
- 潰すと炎症を起こしてさらに大きくなる
- 赤く腫れて痛みを伴うことがある
炎症性粉瘤
皮膚下にある粉瘤の袋が破れたり、細菌に感染して炎症を起こしたりした状態です。膿が出て腫れが大きくなり、強い痛みや悪臭を伴うことがあります。基本的な治療は手術ですが、炎症が強い場合にはまず切開して膿を排出し、腫れや痛みを抑えてから改めて粉瘤を摘出する手術を行います。
粉瘤の原因
粉瘤(ふんりゅう)は、皮膚の中にできる良性のしこりで、皮膚の一部が袋状になって、その中に皮脂や角質などの老廃物が溜まっていくことで形成されます。
粉瘤ができる原因ははっきりと分かっていないことが多いのですが、いくつかのきっかけが関係していると考えられています。
毛穴のつまり
もっともよくある原因のひとつが「毛穴のつまり」です。皮脂や汚れ、古くなった角質が毛穴にたまり、出口がふさがれてしまうと、老廃物が外に出られなくなります。その結果、皮膚の下に袋ができ、そこに老廃物が溜まっていきます。
小さなキズや刺激
皮膚にできたごく小さな傷や炎症、強いこすれ(摩擦)も、粉瘤の原因になり得ます。たとえば、リュックのストラップや下着のゴムなどが肌に長時間当たっていると、その部位に慢性的な刺激が加わり、粉瘤ができることがあります。
ニキビや虫刺されのあと
ニキビの炎症や虫刺されなどが原因となって、皮膚の構造に変化が起き、そこから粉瘤が発生することもあります。特に、繰り返し同じ場所にニキビができている方は注意が必要です。
ピアスや外傷
耳たぶや鼻などにピアスを開けた際にできた小さな傷や、転倒などによる皮膚の外傷も粉瘤のきっかけとなることがあります。体のどこにでもできる可能性がありますが、耳の裏や顔まわりなど、比較的目立ちやすい場所にできることも多いです。
原因が特定できないことも多い
ただし、こうした原因が明確に見つかることは実際には少なく、多くの粉瘤は“自然にできたもの”として扱われます。「清潔にしていればできない」というものでもないため、誰にでもできる可能性がある疾患といえます。
粉瘤のできやすい部位
粉瘤は体のあらゆる部位に発生する可能性がありますが、特に毛穴が多く、皮脂腺が発達している場所にできやすい傾向があります。頭皮や顔(目の周辺・鼻・頬・耳の後ろ)をはじめ、首・胸・背中・お尻・太ももなどが好発部位です。これらの部位は紫外線・化粧品・衣類の摩擦・圧力など外的刺激を受けやすく、粉瘤が生じやすくなります。
粉瘤の日帰り手術
治療法としては「くり抜き法」と「切開法」があり、それぞれに特徴があります。
切開法
皮膚を丁寧に切開し、粉瘤の袋と中身をすべて摘出する方法です。比較的大きい粉瘤や再発を繰り返している場合、しっかりと治療するにはこの方法が適しています。
特徴
粉瘤を袋ごと確実に取り除くことができ、再発リスクが低くなります。
炎症を伴っている粉瘤にも対応可能です。
傷跡がなるべく目立たないよう、縫合の方向や部位に配慮して手術を行っています。
所要時間
通常15〜30分ほど
抜糸
手術から5~7日後に実施(個人差あり)
くり抜き法
粉瘤の中央に小さな穴を開けて、中身と袋をくり抜くように取り除く方法です。比較的小さな粉瘤や、目立ちやすい場所にある粉瘤などに適しています。
特徴
皮膚の切開が最小限に抑えられ、術後の傷跡が目立ちにくい
手術時間が短く、約5〜15分程度
縫合が不要な場合もあり、通院の回数が少なく済むこともあります
ただし、粉瘤が大きい場合や内容物が深く広がっている場合は、切開法が適していることがあります。
術式の選択について
どちらの手術法を選ぶかは、粉瘤の大きさ・位置・炎症の有無・患者様のご希望などをふまえて医師が判断いたします。治療前には丁寧にご説明し、ご納得いただいてから進めておりますのでご安心ください。
粉瘤手術の流れ
1診察
まずは問診にて、症状や発症時期などをお伺いし、患部を視診して診断を行います。脂肪腫などの類似疾患との鑑別も行いながら、治療内容や注意点を丁寧に説明します。
2手術
局所麻酔
粉瘤の周りに印をつけ、痛みが出ないよう配慮しながら局所麻酔を施します。極細針などを用い、できるだけ負担の少ない麻酔を心がけています。
開孔
メスを使用し、粉瘤の中央に直径1〜4mm程度の小さな穴を開けます。この開口部から内容物の除去を行います。
内容物を取り出す
穴から粉瘤内に溜まった皮脂や角質などの老廃物を押し出し、袋状の組織ごと丁寧に除去します。取り残しがないかしっかり確認を行ったうえで、必要な処置を完了させます。
手術終了
内容物の摘出後、縫合して手術終了となります。ただし、小さい傷の場合には縫合を省略することもあります。手術時間は通常5〜20分程度です。なお、炎症性粉瘤には排膿と同時に腫瘍の摘出を行う場合もあります。
3抜糸・経過観察
手術後約1週間で抜糸を行います。術後の経過や傷の状態に応じて、適切な処置を行いながら回復を見守ります。
粉瘤の術後の注意点
- 術後は痛みや腫れが出る場合があるため、処方された痛み止めを使用してください。
- 傷口からの出血や浸出液が一時的に出ることがありますが、ガーゼ交換の指示に従いましょう。
- 手術当日と翌日の激しい運動や飲酒は避けてください。
- シャワーは翌日以降から可能になることが多いですが、患部を直接こすらないよう注意してください。
- 傷口の状態や大きさにより、抜糸のための通院が必要になることがあります。
- 傷の治りを早めるために、なるべく清潔を保ち、指示された通りに処置・通院を継続してください。
粉瘤の治療費はいくら?
保険は使える?
粉瘤の手術は保険適用となります。料金は露出部(頭・顔・首・肘から先・膝から下)か非露出部か、また粉瘤のサイズによって異なります。なお、診察料・処方料・血液検査・病理検査なども保険の範囲内で対応しております。
手術料金の目安
非露出部 | |
---|---|
3cm未満 | 4,000円~ |
3~6cm未満 | 10,000円~ |
6cm以上 | 12,000円~ |
露出部 | |
---|---|
2cm未満 | 5,000円~ |
2~4cm未満 | 11,000円~ |
4cm以上 | 15,000円~ |
粉瘤は発症原因が不明なため、有効な予防方法は確立されていません。顔を含む全身のどこにでも発生する可能性があり、大きくなりやすい傾向があります。
自然に治ることはないため、炎症や臭いが出る前に、皮膚の下にしこりを感じた段階で早めに受診されることをお勧めします。なお、ごく稀に神経の近くなどに粉瘤が生じることもあり、その場合には、当院から高度医療機関へのご紹介も可能です。