「よくある頭痛」と
「注意が必要な頭痛」
頭痛は、通常、一次性頭痛および二次性頭痛に区分されます。大半の症例では、一次性頭痛と診断されますが、時には命に関わる頭痛もあるため、持続的な頭痛や激しい頭痛が見られた場合には、できるだけ早く医師の診察を受けましょう。
特に、長期間慢性的な頭痛に苦しんでいる方々は、日常生活に著しい影響を及ぼすことから、原因の早期診断と適切な治療を受けることが不可欠です。当院では、患者様の症状に考慮しながら適切な治療を提案しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
よくある頭痛【一次性頭痛】
一時的な頭痛は、「一次性頭痛」として知られ、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などはこれに該当します。これらの症状は頭痛が何度も繰り返される特徴を持っており、頭痛自体を治療する必要があります。
片頭痛
主な症状・原因
片頭痛は、片側または両側に激しい痛みが生じる病気で、吐き気を伴い、日常生活に支障をきたすこともあります。発作の頻度や持続時間には個人差があり、数時間から3日ほど続くことがあります。前兆として、視野欠損や閃光が見える場合もあり、特に女性に多い傾向にあります。
原因は完全には解明されていませんが、かつては脳内の血管の収縮と拡張による「血管理論」が主な説とされていました。しかし、現在では三叉神経系の活性化に着目した「トリガミング理論(trigeminovascular system theory)」が主流であり、ストレスや食べ物、ホルモン変動などの刺激により、痛み感受性を高める物質(CRGP)が放出され、血管が拡張して痛みが生じると考えられています。これらのメカニズムは今も研究が進められています。
治療
頭痛が起きた際には、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(ロキソニン、セレコックスなど)の消炎鎮痛薬、レルパックス、ゾーミッグなどのトリプタン系薬、レイボーなどのジタン系薬を早めに服用することで、痛みの原因となるCGRPの放出を抑えて症状を緩和します。
頭痛の頻度が月に4回以上など多い場合には、予防薬の使用を検討します。新薬のエムガルティやアジョビはCGRPに、アイモビーグはCGRP受容体に結合してその働きを抑え、片頭痛の予防に効果を発揮します。
緊張型頭痛
主な症状・原因
緊張型頭痛は、頭や首の筋肉がこわばることで生じる一般的な頭痛で、原因には長時間の同じ姿勢、ストレス、眼精疲労などが挙げられます。頭が締め付けられるような重さや首~後頭部の鈍痛が特徴で、めまいや吐き気を伴うこともあります。運動やストレッチ、リラックスで症状の緩和が期待できますが、強い痛みや慢性化している場合は、医療機関での診察と薬による治療が必要です。
治療
生活習慣の見直しやストレッチなどによる筋肉の緊張緩和に加え、筋弛緩薬や血流を改善する薬を用いる薬物療法が行われることがあります。
群発頭痛
主な症状・原因
群発頭痛は非常に強い片側性の頭痛が一定期間に繰り返し起こる疾患で、特に男性に多く見られます。頭痛は1〜2ヶ月間続き、一定の周期を経て再発する特徴があり、目の周囲の腫れや涙、鼻水、顔の発汗、まぶたの下垂、瞳孔の縮小などの症状を伴います。
原因は未解明ですが、視床下部が関与している可能性があり、アルコール、特定の食べ物、ストレス、季節の変化などが発作の引き金となることがあります。発作がいつ起こるか予測できず、強い痛みが長期間続くため、身体的・精神的な負担が非常に大きい病気です。
治療
根本的な治療法はなく、発作時にはトリプタン製剤の使用や高濃度酸素吸入が効果的とされています。新薬のエムガルティも有効とされ、米国では承認されていますが、日本では保険適用外です。
注意が必要な頭痛
【二次性頭痛】
二次性頭痛は、脳や頭部の疾患をはじめ、外傷、感染症、耳鼻咽喉科領域の病気、精神的要因、生活習慣病などに起因する頭痛で、命に関わることもあるため注意が必要です。手足のしびれや麻痺などの症状を伴う場合は特に警戒が必要で、脳出血や脳腫瘍など重篤な原因が考えられることもあります。
原因不明の頭痛で悩んでいる場合は、早めの医療機関受診が推奨されます。
頭痛外来の検査・診断
頭痛は身近な症状である一方で、重大な病気が隠れている場合もあるため注意が必要です。当院では、患者様のお話を丁寧に伺い、必要に応じて検査を実施しながら、頭痛の原因を的確に見極め、安心して治療に進める体制を整えています。
問診と診察
頭痛の診察では、種類・頻度・部位・発症タイミングなどを詳しく確認し、発熱や吐き気、めまい、しびれなどの随伴症状の有無も重要な情報として把握します。
血液検査
感染症や炎症、貧血、ホルモン異常などの原因を調べる際に行われる検査です。特に急な頭痛や体調不良がある場合には、全身の状態を確認するために有効とされています。
血圧測定
高血圧が原因で頭痛が生じることがあり、特に後頭部のズキズキする痛みや朝に起こる頭痛の場合は、血圧の確認が重要です。
画像検査(必要に応じて)
画像検査(CT、MRI検査)が必要と判断された場合には、近隣の医療機関と連携し迅速に対応します。脳出血や腫瘍、脳血管障害など命に関わる疾患の可能性がある際は、早期の診断が非常に重要です。
「いつもと違う」と感じたら、一度ご相談ください
いつもと違う頭痛に悩まれている場合は、ためらわずにご相談ください。頭痛が脳疾患によるものであったり、その前兆として現れたりすることもあります。呂律が回らない、手足に力が入らない、これまでにない強い痛みや徐々に増す痛みがある場合は、特に注意が必要です。
脳疾患は治療のタイミングが重要となるため、異常を感じた際には早めの受診をお勧めします。