- 肛門の痛みと発熱は
あな痔(痔瘻)のサイン!? - あな痔の原因
- あな痔の初期症状と代表的な症状
- あな痔の検査・診断
- あな痔の治療
- あな痔の手術料金の目安
- あな痔は自然治癒する?
放置した場合のリスクとは
肛門の痛みと発熱はあな痔
(痔瘻)のサイン!?
肛門の周りに膿が溜まる状態を「肛門周囲膿瘍」と呼び、悪化すると「あな痔(痔瘻)」に進行します。症状としては痛みや腫れ、38〜39℃の発熱、膿による下着の汚れなどが見られます。膿は自然に皮膚から出る場合もあれば、医療機関で切開して排出することもありますが、その後に瘻管(膿の通り道)が残ります。
瘻管のみではしこりや少量の分泌物が出る程度ですが、再び膿が溜まると痛みや腫れ、発熱などを繰り返すようになります。こうした慢性的な状態には手術による治療が必要です。
また、痔瘻(じろう)は男性に多い傾向にありますが、その理由は未だに不明です。
肛門周囲膿瘍
肛門周囲膿瘍は、肛門周りに膿が溜まる疾患です。温水洗浄便座の使い過ぎ、飲酒、免疫力の低下、軟便・下痢などによって発症しやすくなります。主な症状は痛み、赤み、腫れ、発熱などで、初期段階ではお尻が腫れて強い痛みを感じ、触れると悪化します。膿が深部にあると症状が分かりにくく、発見が遅れることがあります。
痔瘻(じろう)に進行すると、膿が通路(瘻管)を通って排出され、痛みが軽減しますが、しこりや分泌物、かゆみなどが現れます。
あな痔の原因
肛門の歯状線には肛門陰窩という小さな窪みがあり、ここに粘液を分泌する肛門腺が存在します。激しい下痢などで便が侵入し、感染・化膿が起こると「肛門周囲膿瘍」が発生します。これが慢性化すると、膿が肛門周囲の組織に瘻管(通路)を作って皮膚へと進み、出口から膿が排出される「痔瘻(じろう)」に進行します。肛門周囲膿瘍の約30〜50%が痔瘻(じろう)に発展するといわれており、他にもクローン病や切れ痔、膿皮症、結核などが原因となることがあります。
あな痔の初期症状と
代表的な症状
「あな痔」とは、正式名称「痔瘻(じろう)」と呼ばれており、肛門とその周りに瘻管(トンネル状の通路)ができる疾患です。多くは、肛門周囲に膿が溜まる炎症(肛門周囲膿瘍)により起こります。
あな痔の初期症状
- 肛門周辺の赤みや腫れ
- 押した際の痛み、座った時の違和感
- 肛門周囲に熱感を伴う痛みがある
- 38℃以上の発熱
- 倦怠感・寒気など
上記症状が見られる場合、膿が溜まり始めた「肛門周囲膿瘍」の可能性があります。この段階で適切な処置がされないと、膿が皮膚表面に出て瘻管が形成され、痔瘻(じろう)へと進行する恐れがあります。
進行した後の代表的な症状
- 肛門の近くから膿や分泌物が出る
- 肛門の周囲に小さな穴ができる
- 痛みと膿の排出を繰り返す
- 下着が汚れたり、臭いが気になったりする
痔瘻(じろう)は自然に治ることはなく、根治には手術が必要です。症状を繰り返す場合は、早めに医療機関で診察を受けることが大切です。
あな痔の検査・診断
特徴的な症状に基づき、医師の視診・触診により診断できますが、治療方針を立てるためには正確な位置や深さ、周囲への影響を把握しなければなりません。
※当院では大腸カメラ検査・CT・MRI検査には対応しておりません。必要な場合には、検査が受けられる提携医療機関へご紹介します。
肛門鏡検査
筒状の器具を肛門に挿入して内部を確認し、痔瘻(じろう)の入口を探ります。
大腸カメラ検査
腸カメラ検査は、痔瘻がクローン病などの炎症性腸疾患に関連することもあるため、腸全体の状態を評価するために実施されます。腸の炎症や異常の有無を確認することで、診断の補助になります。
※必要に応じて提携医療機関にて受けていただきます。
CT・MRI検査
CT検査やMRI検査は、炎症が強い場合や痔瘻(じろう)が複雑・再発性である場合に有効です。MRI検査では、瘻管の詳細な経路や深さ、周囲の組織への影響を確認でき、CTはMRIが使えない場合の代替として使用されます。
※必要に応じて提携医療機関にて受けていただきます。
あな痔の治療
痔瘻(じろう)は、いぼ痔や切れ痔とは異なり、薬では治癒できません。基本的に手術による治療が必要です。当院では、状態を丁寧に見極めたうえで、日帰りで対応可能な単純痔瘻(じろう)の手術を行っています。
当院での手術治療が困難な症例は、脊椎麻酔での手術が可能な施設へ迅速に紹介を行っております。
瘻管切開開放術
瘻管切開開放術は、瘻管に沿って皮膚と肛門括約筋の一部を切開し、トンネル状になっている瘻管を開放する治療方法です。開放された傷口は、時間をかけて少しずつ肉が盛り上がり、自然にふさがっていく過程で痔瘻(じろう)が治っていきます。
この手術は、比較的単純な痔瘻(じろう)に対して行われることが多く、治癒率が高く再発のリスクも少ないとされています。治癒までの期間は通常2〜4か月程度かかりますが、確実な治療が期待できます。
ただし、切開の範囲が広くなった場合には、肛門の形が変化したり、一時的に排便時の違和感が生じる可能性があります。そのため、手術にあたっては、括約筋の損傷を最小限に抑えるよう十分な配慮が必要です。
あな痔の手術料金の目安
料金は下記表の通りです。
治療方法 | 料金(3割負担の場合) |
---|---|
瘻管切開開放術 | 4,000円前後 |
※別途、初診料・再診料・検査料が必要になります。
あな痔は自然治癒する?
放置した場合のリスクとは
あな痔(痔瘻)は、肛門の内側と外側の皮膚の間に瘻管(トンネル状の通路)ができる病気で、一度できると自然には治りません。原因の多くは肛門周囲膿瘍で、膿が破れて一時的に痛みが緩和しても、瘻管が残っている限り、再び膿がたまり、痛み・腫れ・膿の排出を繰り返すことになります。放置すると、瘻管が複雑化して治療が難しくなったり、炎症が周囲に広がって膿の出口が複数できたりしますし、稀にがん化のリスクもあるとされています。
根治には手術が必要です。早期であれば比較的負担の少ない処置で済む場合が多く、回復も早くなります。膿が出ても我慢せず、お尻に違和感や痛み、膿の症状が続く場合は早めの受診をお勧めします。